著 者:遠藤周作
タイトル:ルーアンの丘
初 版:2017-08-03
出版社:PHP研究所
刷発行:2017-08-03
本書は、遠藤周作の没後に発見されたフランス留学体験記と結核のために帰国するまでの半年間の日記をまとめて1998年刊行された書物に、今回新たに留学時代に書かれた5通の恋文が明らかとなり、これを収録して本年8月に復刊されたものだ。本の帯には『幻の書、待望の新装復刊!戦後初の留学生としてフランスにわたった遠藤周作。留学先から書き送ったエッセイと日記に、恋人フランソワーズへの「恋文」を新たに収録。こんなにも瑞瑞しい青春があった。』とある。遠藤周作は昭和の大家で狐狸庵先生などの名でも有名だが、私にとってはほとんど馴染みがなく、高校時代に読んだ「沈黙」が遥か記憶の片隅にあるくらいだ。この本を読んで、まず冒頭の部分は渡航準備から船旅の途中までの様子が軽妙に綴られていて、とてもユーモラスで遠藤周作らしさを感じた。が、その後の記述は一転して暗く苦悩する青春が描かれている。異文化に接して戸惑う体験という表面的な感じではなく、先の大戦後の世界でその底辺に生きる人々の苦悩に接して宗教家のごとく身を寄せ、自らの病気と共も苦闘する暗たんたる世界が拡がっている。これが遠藤文学の原点だったのか、と何とも意外な発見だった。
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カテゴリー:伝記小説
ブログ登録日:2017-09-12


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