読書の秋もたけなわで、ここ1ヶ月に6冊ほど読んだ。うち、4冊が推理小説。文藝春秋2013年春・特別号「東西ミステリーベスト100」にリストされた中からミーハーぽく上位中心の4作品を選んだ。感想を下記する。
【その1】国内第1位の横溝正史「獄門島」は名探偵、金田一耕助シリーズの2作目で1948年完成作。その後に映画化もされたが、前知識なしに初めて読んだ。瀬戸内海の孤島で、網元として君臨する権力者一族の三姉妹が殺害され名探偵がナゾ解きをするものだが、巧妙な伏線、奇抜なトリック、意外な犯人と最後のオチ。さすがに日本を代表する秀作であった。
【その2】その1の延長上で名探偵、金田一耕助が初めて登場する作品、「本陣殺人事件」を続けて読んだ。終戦直後の1946年作。金田一が初めて探偵として挑む密室殺人事件。そこには地方の由緒ある家柄に絡んだ殺戮を鋭い洞察力で暴いた探偵物の初作で、横溝正史“ワールド”誕生のオリジン的な秀作。名物警部も登場して、金田一シリーズの初々しさを感じた。これも映画化された。
【その3】ベスト100リストで国内第5位の宮部みゆき「火車」(1992年作)を読んだ。恵まれない境遇だった女性が他人になりすます背景に事件が絡み、休職中の刑事が活躍するストーリ。よくある殺人事件の様相とは赴きが異なる。推理小説と言うよりか、事件簿のような感覚でエログロとは異なる透き通った怖い感触を覚えた。10傑入りに相応しい秀作。映画化はストーリ展開の結末から到底、無理と思っていたところ、韓国で映画化し、観客動員200万人を超える大ヒットを記録したとのこと。原作とはかなり異なる映像化とも思われる。
【その4】ベスト100第8位の綾辻行人 「 十角館の殺人 」(1987年作)を読んだ。日本のミステリー界に大きな影響を与え、新本格ブームを巻き起こしたとされる。何ゆえ、新本格と言われるようになったか不勉強で分からないが、小説の構成に目新しさが挙げられる。殺戮現場の島と本土の二つの場所でストーリを同時進行させたり、登場人物の名前を推理小説家にちなんだニックネームで記したり、探偵が最後に謎解きをするのではなく、犯人が述懐するあたりに面白さを感じた。登場人物が次々に殺される展開はアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を彷彿させるが、どちらが秀作かは議論が分かれる。連続殺戮が淡々と描かれ、私としては上記3作品の方が好ましい。まあ、10傑入りしてもいいかな、と言った感じだ。こちらは映画化されていない。
推理小説は以前より海外物には馴染みがあったが、国内物はどことなく陰湿で暗いイメージがあって今まであまり興味を覚えなかった。今回、4冊程読んでみると、どうして面白く集中して読む気力が出てきた。秋の夜長、次は何を読もうか思案している。と言っても、今借りている数冊は別物だが...。