先月の選考で芥川賞に選ばれた題記の本を読んだ。本の帯には「九年の時を経て重なり合う二人の女性の想い。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語」とあり、文芸各紙が絶賛していた。が、とてもそのような感触はなく、不思議な本だった。短編でなく長編でもない中編で、手頃なボリュームは2〜3日で読めると思ったが、捉えどころのないストーリを理解することに難渋し、脈略を追って読み進んだり戻ったりと、読破に1週間を要した。結局、感動も読後の心地よさもない辛い読書だった。芥川賞は文芸の先駆性や文体の瑞々しさなどを優先評価する傾向のようで、今回の受賞作も奇をてらったスポット作の感が強く、馴染めなかった。
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