2015年下期の直木賞受賞作である掲題の本を読んだ。いかにも時代劇に登場しそうな女性の表紙絵に惹かれ、最初のお題目の話を読み終えて、この先ストーリがどう展開するのかと思ったら、1話づつ完結する短編集だった。全6話で最後のお題目が「つまをめとらば」となっていて、直木賞はこの1話の短編で射止めたのかと思って調べたら、そうではなく6話の短編集の合わせ技だと知った。1話づつ簡易な文ながら、いずれの物語もそれぞれの情緒にあふれていた。6話とも時代設定は江戸時代、男女の生きざまの葛藤が描かれていてどちらかというと肯定的な明るい結末に仕上げられている。この種の小説を読むと、どうしても藤沢周平と比較してしまう。藤沢周平は女性の立場に寄り添う情感が色濃くにじみ出ているが、この本は男目線で、また武士から平民を見下す視線が目立った。また、どの短編もパターンが似通っていて男二人に、女一人が登場して物語を成すさまが少々気になった。
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