末國(編集)「小説集 黒田官兵衛」/渡邊 大門「黒田官兵衛 作られた軍師像」を読んで

壮年期は秀吉に、晩年は家康にも仕えた「黒田官兵衛」に関する題記の2冊を読んだ。

「小説集 黒田官兵衛」は近世の著名作家6名(菊池 寛、鷲尾 雨工、坂口 安吾、海音寺 潮五郎、武者小路 実篤、池波 正太郎)が著した小説を1冊に集めたもので、それぞれが官兵衛を主人公とする独立した私小説であり、とても伝記物とは言いがたい。描く人物像も6人十色(?)で、読後イメージできる官兵衛とは一体、善人か悪人か、上位に忠誠心があったかなかったか、英雄なのか策士なのか、理解しようとすればするほど判然としない。要は人名と地名の実名を使いつつ、各著者が思い描く自由小説で黒田官兵衛を知るための小説ではないことはうなずけた。

20131126

「黒田官兵衛 作られた軍師像」は歴史学者が著したもので、戦国武将の黒田官兵衛について現存する資料を吟味し、広く信じられている官兵衛像の定説がどこまで信憑性があるものなのかを丁寧に検証している。子息の黒田長政についても多くのページを割いて、黒田家譜のリアルな人物像を描くことを主眼点にしており、官兵衛の実像を計り知るには適当な書籍だと思う。但し、検証ベースとした歴史資料自体にも信憑性の問題が多々あり、果たしてどこまでが真実かは予断できない。来年のNHK大河ドラマにもなって、巷には黒田官兵衛なる書物が何十冊も出回っているが、いずれもフィクション書籍であって、作られた軍師像には違いない。

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