ティムール ヴェルメシ「帰ってきたヒトラー」を読んで

20140630この春先、図書館で「ヒトラー最期の12日間」と言うDVDを借りて観たが、今月の新刊コーナーでは題記の本を見つけた。あまりに衝撃的なDVDから醒めやらぬうち、またヒトラーの本に出くわしたが、ドイツ国内ではミリオンセラーとなったようだ。現代に蘇ったヒトラーが、最初はお笑い芸人として、やがて現代の政治や社会問題に鋭く切り込む論客として人気を得て行く物語。ドイツではヒトラーの「我が闘争」は発禁処分であり、ナチズムは非合法として厳しく弾劾しているにも拘わらず、このような本が発行されて大ヒットとなったのは驚きだ。最初は主人公と距離をおいて笑い飛ばしていたはずの読者が、ヒトラーと一緒になって笑いだし、そして親近感やある種の共通感を覚えるような流れとなっている。背景にはヒトラー復活の素地がまだあるのではないか、と作者は疑問を呈している。が、私は読み通して、やはり奇をてらったエンタメ小説の何者でもない感がした。

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