藤沢周平 – 「市塵」を読んで

20130507題記の本は徳川六代将軍・家宣と七代・家継を支えた新井白石の伝記小説で、藤沢周平が新井白石なる人物に共感を覚え、かなり肩入れした人物像を描いている。一介の浪人が幕政の中心で執政権力に乗じて種々の政策を敢行した後、吉宗の代替りに失脚し市井の人として著作に没頭するまで儒者の生き様を淡々と物語っている。新井白石の偉大な生き方や徳川元禄時代の推移を臨場感をもって知ることができた。昨年12月来、藤沢ワールドにハマりほとんどの名作を読んだ。今回の伝記物の延長では、「一茶」「白き瓶」「密謀」「漆の実のみのる国」などでリアリティとバイタリティを感じ、武術伝では「用心棒日月抄」を始めてとする活劇の痛快さ、武士魂では「蝉しぐれ」や海坂藩短編の暗き陰謀、そして市井ものでは江戸庶民の悲哀など、どれをとっても飽きのない超絶な世界を堪能した。さて「藤沢シリーズ」もいよいよ卒業することになり、これからはどの本に没頭しようか思案している。豊科図書館の「藤沢周平・全集」に感謝します。

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