横山秀夫「クライマーズ・ハイ」を読んで

今月のテレビ放映で、2008年公開の掲題タイトルの映画を見た余勢に原作の小説を読んだ。原作は1985年の日航ジャンボ機の墜落事故から18年後、当時の地方新聞の記者であった著者が体験し実際に墜落現場も取材したと言う、この事故を題材に書かれた。地方新聞社が未曾有の大事件に取り組んだ様を回想録風に描いた作品だ。熾烈なスクープ合戦、新聞社内の派閥抗争、友人の病、親子のすれ違いなどが臨場感たっぷりに描かれ、読み応え十分だ。ジャンボ機墜落がメインの小説だが、主人公が泥臭く記者魂の信念を貫抜こうとする中で、もがき苦しむサラリーマンの生き様が最大のテーマになっている感がし、映画とはまた違った趣きがあった。
日航事故から今年で30年となる。個人的には、事故当日(1985.8.12)、会社の職場で催された洋上暑気払いの船上で見た東京湾上空を旋回する飛行機の中にまさに、当該機があったであろうことをその後も長く記憶の隅に止めていたことが蘇り、そして郷里の群馬の地名がそこここにちらばめられた小説を読んで、何とも懐かしい想いがした。

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