今年2月にこの本が出て久しいが、ようやく2冊を読むことができた。図書館予約が殺到し、第1部を借りるのに約3ヶ月、続きの第2部は第1部を読み終えてから2週間のブランクがでたが、7月になってようやく入手できて3日間で読み終えた。読後の感想を一言で言えば、とにかく読んだの感だが、具体的にはいろいろあって複雑な心境だ。まず、この本のジャンルは何だろう。前作の長編「IQ84」はファンタジー&推理小説のつもりで読んだが、今回の本は分類が難しい。敢えて言うならば、第1編のサブタイトルにあるイデア、「観念」をテーマにした私小説なのだろう。哲学者プラトンがイデア、その弟子のアリストテレスがメタファー(暗喩、明確でないたとえ)を唱えたが、この哲学用語をサブタイトルにしたところが春樹らしい。物語は現実と非現実の世界を彷徨い、今回はナチや南京事件の出来事まで絡んだハルキワールドだ。荒唐無稽で全く現実離れしている物語なのに、それをあたかも本当のことのようにグイグイと惹きつけて読者を没頭させてしまうことができるのは、さすが村上春樹の筆力の凄さでまたしても感心させられた。ネットでこの作品の評価を調べてみたが、賛否両論だ。ただ、売れ行きは予想に反して伸びず、予定した130万部の半分は返品になる見込みの情報もあった。毎年、ノーベル文学賞の候補にもなる作家だが、本作品は少年少女の健全な読み物とは程遠いものであるのは確かだ。
Monthly photo – 2024.11
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