題記の本を図書館予約して1ヶ月半、数日前にようやく手にして読んだ。なかなかの出来栄えだ。ジャンルは恋愛小説なのだろうが、全体を通して純文学が色濃く出ている。出だしの自虐的で混沌とした雰囲気は梶井基次郎や太宰治を彷彿させた。この先どう展開するのか、飽きることなくワクワク感を持って読み進むことができた。文体はデビュー作で芥川賞を射止めた「火花」と似ていて、今作も又吉自身の体験が滲み出たようなタッチとなっている。孤独で弱々しい主人公の恋愛が何とも切なく描かれる一方で、対極的な人々の描写も生々しく綴られていて、又吉の筆力にあらためて感心させられた。次作も期待できそうだ。
Monthly photo – 2024.8
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