佐藤正午「月の満ち欠け」を読んで

先日、受賞した直木賞作品を読んだ。読み始めるとハマってしまい、あっという間の2日間だった。不思議な本で、まずジャンルは何だろう、ホラーかファンタジー或いはミステリータッチの恋愛小説なのか判断が悩ましい。おまけに主人公は一体誰だろう、強烈なラストシーンを思い起こせば、少女なのだろう。テーマは「人の生まれ変わり」を扱う輪廻転生だ。序盤はクドクドと輪廻の出来事を時間軸を前後して物語り、核心がなかなか見えずに翻弄されたが、後半は一気に流れ出して今までの問題提起が謎解かれて収束する感じだった。この作家の文章は上手いのかどうか、往々にして分かりにくさが目立ったが、それは私自身の読破力と理解力の衰えのようにも思えた。よくよく筆跡をたどれば、緻密な人物描写、練られた伏線、そして研ぎ澄まされた文章であることが判った。なかなかの力作で受賞が頷け、読み甲斐があった。

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