木下昌輝「敵の名は、宮本武蔵」を読んで

掲題の本は2017年度上期の直木賞候補となった本で、受賞日の前後に関係なく図書館で直ぐに借りられた。目次の構成から7話からなる短編集かと思ったが、時系列に絡んだ宮本武蔵の伝記物だ。雑誌に個別掲載された6編のものを最後に書き下ろしの最終章を加えて加筆修正したものであった。いずれも武蔵を主人公とせず、「敵」の相手側を主人公に描いていて面白い作風だ。歴史上の人物が登場したり、後世に伝説化された武蔵の武勇伝が継承されて描かれ、およそ史実に沿った実話のように思えた。まあ、多くはフィクションものと考えるが、読み物としては迫力があって楽しめた。ただ、殺陣の描写はあまりにグロテスクすぎて目を覆いたくもなった。時代劇作家としては好みのタイプではなかった。

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