この本は2年前の直木賞受賞作「流」の著者によるもので、台湾を舞台に受賞作とよく似た雰囲気の小説だった。台湾での少年時代と30年後の米国の二つのパートに分かれて物語が進展するが、1人称の語り手が突如、切り替わり意表を突かれた。ミステリーとして凝った構成になっているが、ミステリーと言うよりも切ない青春物語を扱った純文学作品のようにも思えた。児童誘拐の連続殺人犯が登場し殺伐として物語が始まり、少年時代の仲間との交流、その中の誰が犯人なのか、そして結末は、と畳みかけるように読むことができた。これは著者の筆力の巧みさによるものだろう。なかなか読みごたえのある小説だった。
Monthly photo – 2024.11
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