4ヶ月ほど前に読んだ「ツバキ文具店」の続編として題記の本がこの10月に発刊された。本のタイトルからイメージすると、前作とは装いを新たにしたのかと思いしや、登場人物が同じで鎌倉を舞台に代書屋の仕事を通じて物語が展開する構成は全く同じであった。と言うよりか前編の延長で、主人公が所帯を持つところから物語が始まった。4章立てで、それぞれのよもやま話に沿って書かれた肉質の手紙が掲載されるスタイルは前作と同じだ。この作家の文章は読みやすく、リズミカルで活き活きとしている。その中心に描かれるのは主人公を取り巻く家族のほのぼのとした情景であり、時がゆっくりと流れるのを感じた。そして女流作家ならではの女性の目線できめ細かい思いやりや情念がそこかしこに溢れていて、お涙頂戴的な纏まり方だ。読みがいのある作品だったが、前作に比べると自由ハツラツでエネルギッシュだったものが薄れ、家族の絆の元に所帯じみた守りの世界に入り浸った感じがした。前作の大ヒットに続く第2弾としてのプレッシャーがあったのか、何となく手堅くまとめた感もした。いずれ次なる続編が出る余韻を残した終わり方だった。
Monthly photo – 2024.11
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