先の直木賞候補の一つだった題記の本を読んだ。大化の改新からおよそ100年後、8世紀の奈良時代に実際にあった天然痘のパンデミックを題材にした小説だ。難しい人名や読み難い固有名詞のオンパレードを除き、とても読みやすかった。中間までは章立て毎に第一人称の人物が異なり、一体誰がこの物語の主人公なのか分かりにくかったが、それがこの小説に幅広いスケール感を醸し出していて、途中飽きることなく読み終えた。物語の最後は完結一歩手前で終わっていて、終結は読者の想像に委ねたようなエンディングだった。その分、読後にあれこれと思い描く余韻がたっぷりと残った。先週来、中編の小説を読み漁っていたので、久しぶりにどっしりとした長編の重みを感じた。これで芥川賞と直木賞との違いを如実に感じ得た気もした。158回の芥川賞・直木賞、話題となった作品にもう少し浸れそうで、これからまだ楽しめそうだ。
Monthly photo – 2024.11
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