先月から読み始めた特捜部Qシリーズの4作目を読んだ。今回は作者が関心を寄せたという優生保護法にまつわる基本的人権の侵害をテーマにしている。劣等とみなした人々の子孫を断絶させるために強制不妊手術を正当化したこの悪法はどうやら世界各国に蔓延したようで、この作品を通してその実態の一部に触れた感がした。折しも、今日のNHKニュースで日本でもこの悪法が平成の初めまで存続し、その被害者が訴訟を起こしたことが報じられた。ドイツ、スウェーデンなどは国が謝罪や賠償金の支払いをしたが、この作品の舞台であるデンマークや日本では謝罪すらしていないと言う。今回のミステリは過去の暗い社会問題を見事にあぶり出した社会派の様相を呈していて、その分野でも話題を呼んだようだ。中身は相変わらず特捜班3人の個性が突出していて、いたるところコメディーのオンパレードだ。これが暗く陰湿な事件の展開と対照的、と言うかバランスよく交錯して長編を飽きることなく読むことができた。ただ、ミステリとしては偶然を多用しすぎて、多分にご都合主義の幼稚さが目立った。ゾクゾクするようなトリックやうならせるような謎解きがあれば完璧なのだが、推理小説とは違ったミステリコメディーと言った感じだった。
Monthly photo – 2024.11
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