ミュシャはチェコ出身で、19世紀末のパリでポスター作家として活躍したことは承知していた。この本の副題は「パリの華、スラブの魂」とあって、ミュシャの生涯を日本の複数の研究家が著した美術書となっていて、およそ彼の全体像を知ることができた。以前はミュシャはポスター作家としてフランスの女優「サラ・ベルナール」を多く描いた挿絵画家のイメージを持っていて、当代のロートレック風の画家と思っていた。しかし、故郷のチェコに戻ってからは「スラブ叙事詩」のタイトルで大作20点を残していて、伝統的な歴史画を描く大家であることがよくわかった。本書はスラヴ民族の歴史を知らない私にとって、観るだけでは理解できない作品の背景が詳説された貴重な本だ。実は昨年(2017年)、東京でスラヴ叙事詩全点が展示されたミュシャの展覧会があって、観に行こうと思っていたが果たせなかった。この本を読んで、何ともそのチャンスを逃したことの後悔がさらに大きくなった。もし外遊できるなら、是非、現地でミュシャを網羅した作品群を見たいものだと思っている。
Monthly photo – 2024.8
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