今村翔吾「童の神」を読んで

第160回直木賞候補の中の一つ、「童の神」を読んだ。平安時代中期の伝説をもとに安倍晴明、藤原道長などの実在の人物をちらばめて描かれた伝奇小説だ。朝廷から虐げられた僻地の先住民が世代をまたいで繰り広げる抗争の物語はスケールが大きく面白かった。反朝廷側の主人公は義民としてかっこよく振る舞い、その活劇は他に似た書物、例えば水滸伝などを彷彿させた。壁をジャンプして乗り越えたり超人的な動きは現実離れしてファンタジー小説のきらいもあって、全編を通した殺戮には最後には少々、持て余した。

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