小川洋子、堀江敏幸「あとは切手を、一枚貼るだけ」を読んで

不思議な小説を読んだ。筆者が二人いて、相互にやり取りした14通の手紙で構成された書簡小説で、月刊誌14ヶ月の連載を単行本化した本だ。かつて夫婦であったと思しき「私」と「ぼく」が交わす文面には、「アンネの日記」はじめ「ニュートリノ」、「ナチ強制収容所」ほか多彩な事象が散りばめられていて一見、捉えどころがない。共通しているのは二人の純文学作家が紡ぐ感性豊かな表現だ。美しい詩の如くだが、内容は暗い。全体を通してのテーマや主張は掴みにくく、最初からシナリオを決めずに連載を通じて双方が謎かけしながら奔放に書き連ねていった小説のような気がした。

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