何の予備知識も前評判も無縁にして、題記の芥川賞候補作を読んだ。大学院生の卒論の期限が迫るなかで繰り広げられる生き様を描いた小説で、とても得体の知れない内容だった。退廃とは違う、自暴自棄でもない、さりとて多くの人が共有できるような青春の痛みを持つものでもない。ジキル博士とハイド氏とは少し違うが、真面目に哲学に向き合う側面とホモに溺れる二重人格の主人公がそこに居た。とても理解し難く、何かしら不潔感も漂ってきて、読後の爽やかさは皆無だ。著者を調べると、大学で教鞭をとる哲学者が定職で、わりと有名人らしい。ネットではこの本の紹介に「気鋭の哲学者による魂を揺さぶるデビュー小説」とあった。確かに魂がマイナス側に揺れて落ち込んでしまうが如くだった。
Monthly photo – 2024.11
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