今回の芥川賞候補作で4作品目を読んだ。とても難しい内容で、斜め読みした程度では中身がつかめなかった。文章全体はとても洗練されていて、新人作家の中でその筆力は相当なものを感じた。舞台はウィーンで、そこに住む疎遠となっていた父親を姉妹が訪問した時のことを書き留めた手記となっている。延々と描かれているのが音楽と文学の芸術論で、これがテーマなのか、それとも親子の憎愛、はたまた姉妹愛なのかが判然としなかった。ちょっと説明不足の消化不良気味で唯一、ウィーンの劇場や美術館の雰囲気はよく描かれていたと思う。作者を調べると、医師を務める若い才女で読後に初めて女流作家の作品であることを知りつつも、なーるほどと納得した。今回が3回目の芥川賞ノミネートで、結果がどうなるか気になる作品だった。
Monthly photo – 2024.11
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