木村友佑「幼子の聖戦」を読んで

今回の芥川賞候補作で最後の5作品目を読んだ。分かりやすい文章で取っ付きやすく、おごりやお澄ましなどの気取りもなくて庶民的な感じがした。芥川賞候補は昔から純文学生粋の中編小説が当たり相場だが、この作品はどちらかと言うとエンタメ風の仕上がりだ。主人公は品がなくチョイ悪で、卑劣感とは言わないまでもとても同情しがたい輩の物語となっている。その一方で、主人公は題名から推測される幼稚で無垢な心を持って世の中の不条理や閉塞感に変則ながら忽然と立ち向かい、疲弊し挫折し、打ちのめされるストーリー展開になっている。その生き方に共感するまでは至らないが、ある種の諦観が共有できたような気がした。今回の5人の候補者の中では一番高齢の50歳で、ネットでは結構評判を呼んでいることを知った。そして、読み易かったのは作者との年齢ギャップが比較的に小さかったことも影響しているのか、と勝手に想像したりしている。

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