呉勝浩「スワン」を読んで

明日、発表予定の直木賞にノミネートされた題記の本を読んだ。サスペンスやミステリーとはちょっと違う、文芸ジャンルとしては事件小説の類だと思う。巨大ショッピングモールで起こった無差別殺戮テロの被害者同士が事件を振り返って論争し、各自の抱えた過去や嘘が次第に暴かれ、反駁し敵対して最後のクライマックスを迎えると言った流れのストーリーだ。事件そのものは最初の60頁、全体の1/6ほどで愉快犯達の自殺で終結するが、犯人と被害者との関わりを巡って「本当は何が起きたのか」がテンポ良く展開されていて、読むに飽きない。そこそこのサプライズやどんでん返しがあって楽しめた。ただ、スワンの題名にも関係してバレエ「白鳥の湖」のシーンがやたらと出てきて物語を脚色し、こじ付けがましさを感じた。

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