今話題の直木賞受賞作「熱源」を読んだ。樺太を舞台に実在したアイヌ人とロシアからの流刑囚の二人をモデルに創作された歴史小説だ。時代は明治から昭和に渡り、樺太にとどまらず北海道、ロシア、パリなど時空も前後して描かれ、そのスケール感に圧倒された。著者の受賞後インタビューを見ると、「歴史書のような地の文で自意識過剰や知識自慢になってしまうのを避け、ある時代を懸命に生きた人々を生き生きと描き出すことに心掛けた」とあって、うなずけた。辺境の極寒の地でありながら、領土問題の最前線で人々が激動の波に飲み込まれて苦悩し、想像を絶する光景が繰り拡げられ、こんな世界がひょっとして実在していたのかと想うと、胸が熱くなった。スケール感も臨場感も満点で、久々に大作を読んだ心地がした。ただ、時空が地球の半周で明治黎明から第2次世界大戦後まで描かれたが故か主人公達の生き様が断片的で、一貫性のないストーリ展開になってしまった感が否めない。
Monthly photo – 2024.11
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