北野武「首」を読んで

筆者「北野武」はビートたけしの本名で、初めて手がけたと言う掲題の歴史小説を読んだ。戦国時代の「本能寺の変」前後を描いた小説で、信長、秀吉、家康の三傑を軸に光秀、千利休、荒木村重などを加えて、たけしが想像した実在人物の心の内を綴った戦国ストーリーが展開する。主人公は秀吉に仕え、上方落語の祖と言われる曾呂利(そろり)新左衛門で、たけしが彼に乗り移って面白おかしく戦国を語るスタイルと言った感じだ。もちろん史実とはだいぶ異なり題名の「首」が血みどろになって全編を通して出てくる様は、まるで「アウトレイジ」の戦国版だ。一般の歴史書との違いとしては、劇画や映画の脚本を色濃く感じさせる内容で、悲喜劇こもごもタッチの作風の終結は落語の落ちを演出したようだが、面白味よりも後味の悪さを全面に感じた。

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