本書は幕末の広島藩の動向を記したもので、芸州広島藩の記録である「藝藩志」の史実を元に小説化したとある。登場するのは皆実在人物で、主人公は20歳にして戦没した志士だ。前半は広島藩が倒幕に深く関与し、大政奉還が長州抜きで広島、薩摩、土佐藩の主導でなされた経過が描かていて、世の中で知られている倒幕の歴史とは全く異なる印象を受けた。実際には広島藩は倒幕の口火となった鳥羽伏見の戦いには参戦せず、静観しいて戦火に怖気付いた日和見主義のレッテルを貼られたようだ。この汚名を晴らすため、後半は若き主人公が戊辰戦争で活躍するストーリーとなっている。主人公は明治期の回顧史の中で戊辰戦争の一番の英雄と謳われていて、その活躍は凄まじい。この本を通して、広島藩の倒幕に果たした役割の大きさとそれに邁進した英雄がいたことを知り、倒幕の歴史観が変わる思いをした。
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