横山秀夫「ノースライト」を読んで

横山秀夫と言えば推理作家で「半落ち」や「64」の映画化でも有名だ。「64」から6年ぶりの新作であると言う題記の本を読んだ。と言っても発刊は昨年初めで、2004年から2006年に「旅」と題して雑誌掲載したものを大幅改定して単行本化したようだ。どおりでのっけからPHSなどの古びた用語が出てきた。およそ半年ほど予約待ち後に借用し、ここ数日で読み終えた。作風は予期していたミステリーではなく社会派的な人間ドラマだった。失踪事件から始まり、いつになったら刑事事件に進展するのかと思いあぐんでいる内にストーリが別展開し、後半は予想外の社会派ドラマとして怒涛の如く終結に至る流れだ。最後の建築設計事務所のコンペ争奪戦のくだりはまるで弱者が勝ち組に挑戦する正義派「池井戸潤ドラマ」を彷彿させるようだった。とても充実した本に久方ぶりに出会った思いがする。実在人物が数名登場する中で、巨匠建築家「ブルーノ・タウト」に関係して井上房一郎の名を見出した時は思わず、懐かしさがこみ上げた。この人物、私の出身高校で当時の同窓会長だった。

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