馳星周「少年と犬」を読んで

今回の直木賞受賞作である題記の本を読んだ。犬が主人公の連作短編集で、6話からなる。3.11大震災で被災した犬が飼い主から離れて全国各地を5年かけて移動し、最後は熊本大地震に遭遇するまでを描き、いつも賢く愛おしく行動する様が感動を呼ぶと言った設定だ。面白く読み終えたが、読後の充足感がイマイチだったのは何故だろう。6話とも死が絡む事件性の設定が現実離れしていて、作者の恣意性、作為性をどうしても色濃く感じてしまう。かなりボリュームあるストーリーなのに意外と小ぶりの冊数なのは無駄のない文章に因るのだろうが、これを簡潔と感じるよりもむしろ幼稚で素人ぽい作風に思えた。このところの直木賞の出来からすれば、本作は及第点に一歩及ばない感じがした。

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