小川洋子「博士の本棚」を読んで

小川洋子のエッセイ集を読んだ。本の構成は自分の好きな本の書評を集めたような感じで、洗練された文章が放つ独特の魔力にハマってしまって、紹介されている本をひとつひとつ読みたくなる衝動に駆られた。ご本人は文章を書くのにとても行き詰まることが多くて都度、師と仰ぐ作家の言葉を励みに文章を紡いでいる旨の回想が随所に出てくるが、個々のエッセイからはとても瑞々しく縦横無尽に文章がほとばしる様相に大作家の片鱗を感じさせる思いをした。さすが、芥川賞選考委員を長らく務め文壇を仕切っている作家であることを如実に感じた。このエッセイ集は発刊が2007年と古く著述した時のご本人の年齢は45歳程度だと思われるが、既に死生観が色濃く出ていてこの作家が幼少の頃から多くの書物に触れ、並々ならぬ経験から達観したかのように思えて仕方なかった。紹介された多くの書物を漁ってみるにこのエッセイ集の文庫本を手元に置くのも良さそうだと感じた1冊だ。

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