この小説は半世紀前に書かれた米国の小説で、その後に流行となったヒッピーの間でこの作家が話題を呼び時代の寵児となって、この小説も大成功を納めたようだ。作家も題記の本も全く知らなかったが、これを読むきっかけとなったのは、先日読んだ小川洋子のエッセイ集の中で、「死の床に就いた時、枕元に置く7冊」の一つに掲げていて、「読んで見て打ちのめされた、こんなすごい小説があったなんて」と紹介されていたことにある。この本を図書館で探すと、安曇野も松本にも既になく購入することにした。例によって丸善のサイトで探すと、松本店に在庫があって入手した本は昨年8月に11刷発行されたもので、今だ人気のあることを思い知った。さてこの本だが、200頁ほどの薄さで、詩人でもある著者がタイトルごとに2〜3頁位の短い簡潔な文章で書かれていて読みやすい。内容はファンタジー小説ぽく西瓜糖で多くの生活必需品が作られ、言葉を話す虎が出てきたりと、独特な雰囲気の中で詩的な世界が繰り広げられている。とても印象深く、驚きと心地よさが同居したような雰囲気の本だ。ただ、愛読書として小川洋子が何度も読むような本ではなかった。最後に裏表紙のキャッチコピーには「燈明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血を描き、現代社会をあざやかに映して若者たちを熱狂させた詩的幻想小説」とあった。
Monthly photo – 2024.11
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