マルク・デュガン「透明性」を読んで

松本の図書館の新刊コーナーで見つけ、年末年始にかけて読んだ。フランスの現代作家が今から約50年後の世界を描いたSFめいた近未来小説だ。地球温暖化が進み生物の種を次々に絶やし、やがて人類も滅びようとしている時にデジタル化の進んだAI技術で個人データを吸い上げて鉱物からできた身体に移し替えて分身として蘇らせ、不死の世界を開拓した主人公の全世界を相手にした生き様が描かれている。最近話題となっているトランスヒューマニズムやアバターをモチーフにした感の小説だが、不死の実現のセンセーショナルで政界、宗教界のトップがうろたえ、これと渡りあった主人公が新たな神の出現の如く扱われて、読んでる途中から結末が気になった。近未来社会に蔓延する諸問題を浮き彫りにし、現代社会にも警鐘を鳴らしたが如く思われた本作だが、最後のトリックで少し興醒めの思いがした。そして、現実化しなかったトランプ政権の再選後の悪政やプーチン大統領も97歳での現役逝去などと過去事象として紹介されていて、名誉毀損の提訴もあり得るような書き振りに何もそこまでの感がした。

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