今般の芥川賞候補作の一つである題記作が収録された雑誌「文學界」を通してこの作品を読んだ。筆者は元自衛官で確か一昨年にも芥川賞候補となっており、今回のストーリーも戦場ものだ。北海道にロシア軍が上陸して地上戦を繰り広げる内容で、戦争に至る背景や高所対処の状況説明は一切なく、最前線の主人公の体験をただひたすら三人称的表現で描いている。戦闘のリアルさはひしひしと感じたが、指揮命令の伝達方法の幼稚さや肉弾戦の有様などは今のゲリラ戦の延長上に終始した感がした。今現在、もし大規模な侵略戦争となれば、今回のような地上戦のあり方とはだいぶかけ離れる気がして、本作がとても偏った創作であることが否めず、全体を通して馴染めなかった。
Monthly photo – 2024.11
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