鹿島茂 監修「渋沢栄一 」を読んで

今年の大河ドラマ「青天を衝く」の主人公、渋沢栄一の雑誌本を読んだ。今や旬の「時の人」で、いろんな本が出廻っているようだが、雑誌「別冊太陽」の特集に取り上げられていて、これを図書館から借りて眺め読んだ。渋沢栄一と言えば、昔から馴染みがあるようでないような妙な感じだ。その昔の国鉄時代、高崎線の深谷駅のそばに本人の大きな名前が掲げてあって、それを見るたびに「資本主義の祖」らしき人の出生地だ、程度に見過ごしたものだが、その実、どんな人物かを知るまでには至らず無頓着だった。それから半世紀、今にしてその人物の生涯がどんなであったかを知った。明治維新からの偉人と言えば、大方の人物が政治がらみか軍人であって、実業家となると数少ない。今までの認識では実業界での大物は財閥を成した御三家などが思い当たるが、渋沢栄一は多くの基幹産業の生みの親で創始者ながら、子孫に財系列を残さなかったことが財閥の生き方と大きく相違している。私利私欲を追わず、生涯を通して民を豊かにすることに腐心し、実業界のみならず教育界、医療機関、社会福祉分野まで身を粉にして尽力したことに今更ながら、驚愕するとともに大いなる敬意を払いたい。500以上の企業の設立に携わり、700以上の団体の設立にも関与して成功裏に納めた超人的な活躍の源泉はどこにあったのか、不思議に思えてならなかった。

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