澤田瞳子「星落ちて、なお」を読んで

第165回(2021年上半期)直木賞にノミネートされた題記の小説を読んだ。読み始めたのが昨日、そして深夜の2時で一旦中断して今朝には読み終えた。怒涛の1日半、今こうしてブログ作成している夜半まで読後の余韻にどっぷり浸かっている。数日前から読み始めた今回の芥川賞・直木賞候補、いきなり直木賞の本命にぶち当たった感じがする。この作家、今回の直木賞ノミネートは実に5回目で、その分、私もこの作家の作品を読むチャンスが多く、いつもながらその力量に圧倒されてきた。でも、今回は今までで1番のインパクトがあって彼女の代表作の一つに加えてもよい感じがした。幕末から明治にかけて活躍した絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の娘、とよが絵師として葛藤する半生を描いた作品。書き下ろしではなく、一昨年7月から今年1月までの雑誌掲載を束ねたもので、巻末の参考資料四十余冊を踏まえながら代表作に匹敵するような作品に仕上げた凄さが本作に滲み出ている。表紙の挿画は主人公自身が描いた作品、単なる伝記を超えた生き様、人間模様、人生の機微に圧倒され、ぜひお勧めの1冊だ。

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