今般の芥川賞候補で題記の作品を収録した雑誌を読んだ。題材は先日の同じ芥川賞ノミネート作と同様の東日本大震災をテーマにしている。しかし、両者の内容はまるで違うことに驚いた。本作の文章は容易でなく難解で、一文一文を噛み締めながら読まないと、脈略が掴めない。まるで哲学書の如くで、筆者の素性を調べるとドイツ在住でハイデルベルク大の博士課程に在籍する女性だ。物語は9年前の震災で行方不明となった知り合いがドイツの街中に現れるところから始まり、舞台は終始ドイツで、時空を超えて幽体離脱のように扱われる様はオカルトぽい感じだ。当初は斬新で格調高く純文学の香りもして芥川賞作に一番近いのではないかと思えた。が、震災以外でも幽霊となった日本人やドイツ人の死者とその家族も出てきて渾然一体となって、結末がぼやけてしまい中途半端になった感がした。結局、厚化粧した消化不良の物語に終始しただけのように思えた。
Monthly photo – 2024.11
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