第165回(2021年上半期)直木賞にノミネートされた題記の小説を読んだ。候補作を読むのは2作品目で、今回は550ページと結構なボリュームだった。メキシコを舞台にした麻薬と貧困と暴力の世界を描いた物語、と思いきや主人公や舞台が二転三転し、最後は日本の川崎が主舞台となった現代版バイオレンスアクション小説だ。残虐でグロテスクな殺戮描写が多く辟易としたが、それなりにストーリー性があって最後まで読めた。古のアステカ文明が西洋人により滅ぼされ、その怨念をはらすが如く生き残りが麻薬カルテルとしてはびこり内部抗争を繰り返すあたりは史実に照らし合わせた信憑性を感じた。ただ、しぶとく生き延びた主人公が臓器密売シンジケートを立ち上げて日本に巣食うに至り、悪人しか登場しない闇世界の結末がどうなるか混沌としてきた。最後の最後に一条の救いがあったことで、この忌まわしい物語のおどろおどろしさを少しは和らげてくれた感じがする。いずれにせよ、肌に合わない小説だった。
Monthly photo – 2024.8
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