今般の第165回芥川賞候補5作品の中で最後となる、題記の作が収録された雑誌を読んだ。読後に筆者名「りことみ」をネットで調べると、女性であること、そして中国語を母国語とする台湾人であることを初めて知った。それにしても何故、台湾人が日本の文学賞にノミネートされるのか訝しがったが、もうすでに日本での文筆活動で日本の小説家として知れ渡り、第162回の芥川賞候補にもなったことを知り、自分の知識のあさはかさを思い知った。内容は一言で言うと、言語を巡るファンタジー。中国語っぽい言葉、日本語っぽいことば、場所は何となく沖縄あたりが想像され、時代も今よりも先のようだ。それでもSFぽさは微塵もなく、不思議な世界をさまよう感じだ。芥川賞と言えば純文学志向で娯楽から最も縁遠い退屈な代物で、ストーリーも即興的で混沌としているものが多いとされている。が、本作はストーリーがしっかりしていて、結構、読み手を引きつける魅力を感じた。ただ期待して読み進めただけに、エンディングは淡白で物足りなかった。
Monthly photo – 2024.11
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