本書を読む前に画家ゴッホのあれこれを想像し、どんなドラマが始まるのか興味津々だった。が、まずは伝記と言うよりかオークションにまつわる現代話の内容であったことに戸惑った。どうやらゴッホが自殺に使ったとされるリボルバーが2019年のオークションで約二千万円で落札されたことが本書の動機付けになっているように思う。アルル時代に画家ゴーギャンとの共同生活は有名だが、ゴッホは自殺ではなくゴーギャンが殺害したストーリー展開に辟易した。実際にゴッホが本当に自殺したか否かは近年話題にもなっているようだが、何でもありきの文芸の世界ながら、ゴーギャンを犯人に仕立てた筋書きと殺意の根拠に荒唐無稽の何者でもない感じを受けた。ゴッホやゴーギャンの人物像や生活模様などの実態を記した啓蒙的内容は今まで知らなかった側面を理解する上で有意義だったが、無理強いしたストーリー構成には納得がいかず、単なる文芸として愉楽を味わう雰囲気にはなれなかった。私自身のゴッホやゴーギャンへの思い入れがそう感じさせたのかも知れない。
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