昨日、第166回芥川賞受賞作の発表があって、題記の作品が受賞しました。図書館から借りていた雑誌に本作が掲載されていて、たまたま昨日の午前から午後にかけてこれを読みました。今回の候補作5作品の中で本作は2つ目の読書だったので何とも判断できないものの、ひょっとすると受賞するかも知れない感触がありました。一夜明け本日、Amazonのサイトでこの雑誌を検索すると、以下のように定価1,500円の本が6,556円にいきなり跳ね上がっていました。現金なものですね。でも単行本がこれから発刊されるまで、今のところ読める唯一の雑誌です。以下、昨日の読書感想です。
砂川文次の題記作を読んだ。今般の芥川賞ノミネート作で、作者自身は3度目の候補作品だ。いづれも読んできたが、以前の2作品は自身の自衛隊経歴が色濃く出たミリタリー作品だった。今作では主人公の経歴の中で自衛隊は出てくるが、舞台は現代の格差社会で底辺に暮らす青年の破天荒な生き様が描かれている。主人公を3人称で描き、回顧風のようでそうでもなく、さりとて物語の時間軸がどこを中心にしているのかよく分からなかった。おそらく、場面の一段面を詳細に描写するのが得意の作者ならではの文体表現で、鮮烈な場面がいくつか出てくる。いかにも芥川賞選考委員の好みそうなスタイルで、難しい純文学の香りを何となく容易に感じた。
この感想をもった数時間後に、当作品が芥川賞を受賞してなるほどと思った。