深緑野分「スタッフロール」を読んで

これまた第167回直木賞候補の中の一つを読んだ。この作家の本を読むのは2冊目で、前回も直木賞候補作だった。今回も同じように、登場人物が外国人中心だ。1950年代から1970年代にかけてのニューヨークとハリウッドを舞台にした前半、そして後半は2010年代のロンドンのCGスタジオを舞台にしている。第1部と第2部では主人公が変わっているが、通して第1部の主人公が創造した映画のモンスターにまつわるストーリー展開だ。映画に出てくるモンスターの動きは第1部では実際に造形した怪物を特撮で作製し、第2部ではほとんどの映画でCGによるコンピュータアニメになっている。その辺りの映画作りのノウハウが色濃く描かれていて、私自身の趣味と重なって面白く読めた。スタッフロールとは映画の最後に流れるエンドロールで、スタッフ関係者のことを指すらしい。映画のエンドロールは長いもので5分以上、1000人もの名前が連なることもあるのに、重要な部分の造形をしたクリエーターの名前はなかなか載らず、特殊効果の制作会社名に留めることがほとんどのようだ。映画制作の裏方の内情が詳細に描かれ、映画オタクには応えられない程の刺激があると思われる。ただ、月刊雑誌の約2年半に渡る連載で冗長化していて、特に第2部のストーリー展開は間伸びした感が強かった。

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