今般の芥川賞受賞作である題記の小説を雑誌を介して読んだ。前回読んだ作品に次いで2つ目の受賞作だ。芥川賞候補としては長編の部類で、内容に富んだ力作だ。芥川賞作品と言えば本来、純文学が代名詞で深い内容よりも抒情的で香り高い文章ながらさらりとした印象を持っていたが、本作はそれらに逆行したイメージを受けた。むしろ泥臭く大衆文学ぽくもある。本作のキャッチコピーに「震災から十年過ぎねば書けなかった入魂の一撃!」とあり、震災で何もかも失った荒ぶる大地から懸命に生き抜く家族の復興と再生の物語を連想したが、実際は真逆の内容だった。終始一貫息苦しい展開で、暗くジメジメとした描写が何度もフラッシュバックして辟易とした。まあ、ありがちな希望やら明日とやらとは無縁で、厳しい現実をあからさまに描きたかったのかも知れない。
Monthly photo – 2024.11
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