伊集院静「ツキコの月」を読んで

先日、図書館に行った折、今年最後に何か読もうと借りたのがこの一冊。著者は伊集院静。特に思い入れのある作家ではないが、先月に逝去の訃報に触れた。享年は73歳と私とあまり変わらない。彼の著作品は数多く、自身として覚えているのは退職後10年ほど前に2冊ほど読んだ。しからば代表作は何かと館内でスマホ検索したところ、WikiPediaで「機関車先生」とあった。が書架には見当たらず別の著作の中から題記の本を選んだ。理由はパラパラめくりしていて、冒頭にブエノスアイレスの描写があって懐かしさを覚えた。確か10数年前に仕事で行った時の「美しい公園都市」の記憶が蘇った。作品は南米から始まったが、ストーリーは戦前の日本で女優として名をなす波乱の人生を描いている。何となく実在モデルがいそうな感じがしたが、全くのフィクションと巻末にあった。この本を原作に、帝国劇場で森光子と東山紀之主演の舞台が公演されたようで、一体どのような脚本になったのか妙に気になった。本の帯には伊集院静が三年半ぶりに描く長編小説とあったが、期待したほどの力作には思えず通り一遍の感がした。

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