河﨑秋子「ともぐい」を読んで

今般の直木賞受賞作2作品で、2つ目を読んだ。北海道・道東部に住む作家の描く猟師の物語は壮絶で生々しい。道東部の雪の中を中心に漁師の生き様が描かれるが、職業猟師のイメージとはかけ離れ孤高の一匹狼が社会に馴染めず熊や鹿と対峙する獣世界に埋没している。粗野で荒々しい描写が続き、厳寒の自然に対しぶれない男の一生を描き切る物語だろうと想像した。が、終盤には様相がガラリと変わって衝撃的なラスト。著者の主張は何だったのだろう、タイトルの「ともぐい」とは。屈強な主人公を描きつつも、悩み葛藤し別世界に移ろうと懸命に模索する中、やはり元の獣世界の共食に舞い戻るという人の性と「人はいずれは死ぬ、死生観」の諦念を垣間見た感がした。

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