朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」を読んで

掲題の芥川賞受賞作を雑誌を介して読んだ。読了が丁度、選考会当日の発表直前でこれは受賞するな、と直感した。今回の芥川賞ノミネート作5作品の中で4作目として読んだが、これは正真正銘の純文学。いかにも芥川賞の香りのする文体で、内容は結合双生児が主人公のお話。小説でしか書けないようなストーリに衝撃を受けた。しかも著者が医師でとても現実味のある内容に思えた。結合双生児と言えば、ベトちゃんドクちゃんで知られていて、今日までこうした事例はベトナム戦争の枯れ葉作戦に因る劣悪環境が生み出した特殊例と思い込んでいた。が、実はある確率頻度で日本でも今日現在でも実例があることを知った。この事実の中で、実際を想定したストーリー構成に度肝を抜かれた。短い作品だが、意識とは何か死とはなんなのか…と深遠な内容が読後もひしひしと尾を引いた。歴代の芥川賞の中でも秀作だと思う。

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