本書は筆者が作家デビューする前に書かれた文学にまつわるエッセイの中から17編を選んで、改題復刊した文庫本だ。明治以降の著名な作家の誰もが知る小説や詩、随筆に著者の鋭い視点で解説し評論している。共通しているのが対象となる文豪の作品を筆者が子供の頃に読み、それが時とともに筆者の中で感じ方が変容していく様子が描かれている。しかも作家ならではの感受性の鋭さが際立ち、さすが「木内昇」だと彷彿させる。以前に、この作家の3作品を読んで面白く好印象が残っている。ちなみに木内昇は直木賞作家で、「のぼる」でなく「のぼり」の女流作家だ。とても繊細で、文章を紡ぐ表現力は卓越しており、今回の本でも十分にその筆力を楽しめた。
