先月発表された芥川賞受賞作2作品のうち、前回読んだ受賞作に次いでもう一つの作品を雑誌掲載の本から読んだ。芥川賞と言えば短編小説が通り相場だが、本作は少し長く中編の部類に入る。一軒の家の誕生から解体され更地になるまで移り住んだ3世代の人々の思い出を1人の青年のスケッチの筆になぞらえて物語が進む。芥川賞ならではの純文学の流れであるけど、まるでオムニバスのように全く異なる物語が途中から青年のスケッチを介して切り替わるあたり、斬新な文体構成を感じさせた。家も人々もその一生が哲学ぽくと言うかしみじみと穏やかに描かれる様にほのぼのとした情感を覚えた。全体を通し、久方ぶりに芥川賞らしい作品に出会えた気がする。
