加藤シゲアキ「なれのはて」を読んで

本年1月に実施された直木賞にノミネートされた題記の本を読んだ。筆者は後で知ったのだが、タレントでアイドルそして作家だ。まずは多彩な才能に驚く。連載をまとめた形式ではなく、書き下ろしで分量も440頁を超えて分厚い。登場人物は大正から現代まで主要な人物のエピソードが個々に第1人称で描かれ、ストーリーを補足する。テーマは戦争はじめ秋田県の郷土歴、美術や著作権、報道メディアの舞台裏、自閉症と思しき人物の描写などなどてんこ盛りだ。ジャンルはミステリーだが、多岐に渡るテーマが交差して重たい印象となり、畳み込むようなミステリーのインパクト性は薄い。ラストはドラマチックに感動を呼ぶスタイルだが、もう少しシンプル構成にした方が締まる感覚を持った。そこが、直木賞受賞を逃した要因にも思えた。

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