北村薫「太宰治の辞書」を読んで

掲題の本を読んだ。3編からなる短編集で、いずれも太宰治の話が出てくる。文学論をかざしたとても難しい内容だった。文学を志す文士や編集者、小説家の心の中を垣間見た心地になれたのが唯一の救いか。面白かったのはダジャレで、青森の土産品に「生まれて墨ませんべい」と言うイカスミ煎餅があるのだそうだ。「生まれてすみません」のフレーズは太宰治の専売特許だが、この言葉は彼の創作ではなく、パクリであったことを初めて知った。天才作家もネタ探しに奔走し、資料調査も欠かさなかったようだ。ニヒルな文豪と思っていたが、とても人間くさい「太宰治」を知った思いがした。今回、北村薫の本を初めて読んだが、うちのオバはんからは「なにそれ、この有名作家を知らなかったの?」と言われた。おまけに、読み終わった後に北村薫が男性であることを知った。この本のタッチはとても男性が書いたものとは思えない。

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