春江一也「ウィーンの冬」を読んで

前回読んだ作品から始まる「中欧三部作」で、今回は掲題の最終作を読んだ。本来ならば最後に読むところだが、生憎2作目は図書館の蔵書が全て貸し出されていて、書架にあった最後の作を先取りして読むことにした。主人公は同じ外交官だが、1作目の青年から30年を経過して初老を迎えた設定となっていた。リストラで出向に出されて悶々と過ごす中身がストーリの半分を占めていて本筋から浮いた感じがした。後半になって初めてウィーンが登場し、何やら日本のカルト集団や北朝鮮、国際テロ組織が三つどもえとなって核保有国からくすねた水爆を奪い合うバトルを展開するのだが、たたみ掛けるようなテンポがなくバトルも幼稚さが感じられた。荒唐無稽のストーリに違和感を覚えながら読み進めたが、先日、富山大学でトリチウムの機密データがハッキングされた報に触れて一気に現実味を帯びた感触を持った。本作を通じて、何とも恐ろしい時代に生きている感を強めた。予約しているシリーズ第2作「ベルリンの秋」はいつ入手できるか気になるが、予約した本が今、5冊重なっていてどの順に借りられるか興味津々だ。

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