六冬和生「松本城、起つ」を読んで

題記の本は図書館の「貸出しベスト」ランクの筆頭になっていて、ここ松本地方の百姓一揆を題材としたものだ。現代人が江戸時代の初期にタイムスリップして実際に起きた百姓一揆に関与するストーリとなっている。筆者は松本に住む会社員で過去にSF小説のコンテストで受賞した実績があるようだ。初めて読む作家だが、作風がヤングアダルト小説ぽく、チャラ男のコミック版を連想するような感じだった。読み終えて、ネットで調べたら作者が女性であることに驚いた。タイムスリップした先での物語が在らぬ方向に突き進んだ後に突然キャンセルされ、次なるタイムスリップで別の経過を辿り、またぞろそれをやり直すなど、漫画ちっくなケーススタディが展開するストーリーで、馴染めず読後の疲れだけが残った感がした。斬新な試みながら、結局は主張が見えずに面白みのない小説だった。地元作家の反響を呼んだ作だが、次作を期待したい。

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